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瀧本ゼミ政策分析パート 新歓特設ブログ

このゼミは、京都大学の瀧本哲史客員准教授の下、自ら関心のある社会問題に対する解決策を立案し、ロビイングや社会起業、学術研究などの政策にとらわれない手段によって実際に問題解決を図る、東大を中心とする自主ゼミです。詳しい情報はこちらへ http://seisaku.strikingly.com/

「本当に大事なのはオリジナリティなのか?」ゼミ5期生渡邊さんインタビュー

今回は、今年春に入ゼミして瀧本ゼミ5期となり、痴漢問題に取り組まれている慶應大学法学部政治学科2年の渡邊みなみさんにインタビューです!今回は渡邊さんにダイバーシティから見る瀧本ゼミの魅力や、渡邊さんが取り組まれている問題についてお話いただきます。
また本インタビューは対談形式として、ゼミ上級生の慶應大学医学部6年の石橋がインタビュアーを務めます。


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「ゼミに入るまで」

石橋:今日は宜しくお願い致します。渡邊さんは突然ゼミにいらしたという印象があるんですが、渡邊さんがゼミに入られた理由を教えて頂いても良いですか?

渡邊:自分は慶應大学に入学し、大学の授業のような受け身な勉強ではなく、もっと知的好奇心の持った人達と問題追究をしたいと思ってあるサークルに入ったんですが、そこでの議論や政策検討などが、なんとなく自分に合っているように見えなくて。自分は大学に入りたてでしたし、深い知見があったわけでもないですが、周りと物事を考えるベクトルが違う気がして、そこにとても苦しい覚えがありました。そんなところ、たまたま瀧本ゼミを知って、瀧本ゼミに来ました。

石橋:それは行動力がありますね。今まで入られていた団体のどういう所に不満を持って、いらしたのですか?

渡邊:私は今大学2年生なのですが、大学1年の間にいたサークルは、ディスカッションする中で、そこで出されているオリジナリティって本当にオリジナリティなのか?って 疑問に感じるタイミングが結構ありました。
例えば、「今日は農業の衰退について考えよう!そのための政策立案を考えよう!」と、なった時がありました。その時に、みんなでオリジナリティが大事って事で、スマートフォンとかを使って、色々個別の事例は調べるんですけど、問題を深堀りしないんですよね。「農業に若い人が足りない」って話は調べれば一瞬ででてくると思いますが、そこから「じゃあ若い人を集めないと!」みたいになってしまうんです。原因を深く追究する事をせず、原因を調べた上で一番効きが大きいところに打ち手を考えるという事もないんです。今思うと、凄く恥ずかしい話なんですが、当時流行だった若手アーティストのパロディを農村の方達がやって、一時的にその村が若者に注目されたというニュースを見て、飛びついてしまい、みなで堂々とその事例について、「このオリジナリティが日本の農業を救うね!」と感心していて、ひとりだけで虚無感を覚えていたのを記憶しています。かと言って、自分自身でどうやったら徹底的なリサーチのもと原因分析ができるかもわからなかったので、どうすることもできずただ苦しい日々が続き、本当に行き詰まっていました。

石橋:なるほど。確かに、そのような取り組み自体は悪い事ではないとも思いますが、やったとしても、簡単に真似されてしまうかも知れませんね。あとは、一時の流行で、暫くすると目新しさもなくなってしまうという事もあるかも知れません。

渡邊:そうなんです。そういうのって寧ろコモディティ(注:市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差のない状態のこと。転じて、そのようなビジネスやアイディア、人材。)って言うと思うんですけど、結局根本的な問題を解決できていないと思いました(そもそも根底にある問題は何なのかを調べてないわけですが)。例えば、こういうアイディアっていわゆる、「ゆるキャラ」もありましたけど、ひこにゃんくまモン辺りまでは個性的で良かったかも知れませんが、その以降はみんな真似すれば上手くいくという訳ではなく、更に多くのキャラクターが出て、埋もれてしまいましたよね。
寧ろ本当に必要なオリジナリティというのは、全然違う分野とか、誰も知らない オープンソースとかを組み合わせて、誰も知らない情報や示唆を使って、何かを作り出す、良い打ち手を探すという所にあるのではないかと自分は思っています。
例えば、このゼミでは、ある小売店の企業の出店戦略を調査する場合でも、既存の調査で、そのような調査がなされていない事も多いので、Googleマップに小売店や競合、出退店時系列データ、自宅数、関連施設などを入力し、出店の傾向や競合に対する戦略を分析しています。そういう自ら作るデータや、他の誰もが持っていない事実がオリジナリティを生むのではないかと思っています。

「現在のプロジェクトについて」

石橋:なるほど。確かに単にオリジナリティというよりも、徹底的に調べる、そしてそこから多くの人が知らない新しい示唆を出するというのが強みになるという事なのかも知れないですね。例えば、渡邊さんは痴漢の問題に取り組まれていると思いますが、その問題に取り組まれている中での、新しい示唆は、どういう所だと思っていらっしゃいますか?

渡邊:痴漢の政策はどのように検討され、実行されているかということについて調査したのですが、大半は強い根拠で政策が実行されていた訳ではありませんでした。例えば、2011年の警察庁のある報告書でも、一般女性にアンケートを取り「どのようなことをすれば、痴漢はなくなると思いますか?」と聞き、その政策を痴漢対策として導入しましょう、という見解でした。 ちゃんと効果があることが証明されているわけではないし、みんなが思ってること=正しいという訳ではないと思うんですよね。そこで、痴漢ではなく、もっと範囲を広げて、犯罪学の中の防犯分野をリサーチし、何が防犯の決め手になるのか、つまり犯罪抑止効果を持つ条件などを探していきました。
なので、まず、きちんとリサーチをするという所と、その分野に知見がない時は他の分野からの知見を積極的に引っ張ってくるという事は大事なんじゃないかと思っています。

石橋:それで、痴漢問題に対する、良い解決策は見つかりましたか?

渡邊:そこで出てきたのが実は電車内の防犯カメラ設置なんですが、防犯カメラって実は二つの条件がそろってないと犯罪抑止効果を持たないんです(島田貴仁 防犯カメラ-効果ある設置・社会的受容に向けて-)。その条件は防犯カメラの認知と逮捕リスクの認知。
つまり犯罪者がそこに防犯カメラがあると気づき、さらにそこに自分が映ることで逮捕されてしまうリスクがあると感じなければ抑止効果はないという事が既存の研究で証明されている事が分かりました。
電車の車両場合ですと、カメラの見た目や位置(出入り口などBrandon ,2002)を工夫すれば、認知は必ずされます。また現在、満員電車でのみ、しかもその中でも逃げやすいドア付近や、駅間の時間が長い時(例えば池袋―新宿の五分間)に痴漢は発生する率が特に高いことからも、痴漢は逮捕リスクによって、発生頻度が大きく変わる事が分かりました。よって現時点で痴漢に対する監視カメラの抑止効果に関する研究事例などは、ありませんが、おそらく防犯一般の知見からは、防犯カメラを導入し、抑止効果のある状況で車内に設置を行えば、痴漢の抑止効果はあると考えています。


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【発表時のスライドの一例:ドア間の発生が多い】


なので、今後は設置後の痴漢発生率の調査や研究、設置車両と不設置車両の比較、告知の有無による被害の増減などを調べていきたいと思っています。

石橋:ありがとうございます。自分が最初にこのアイディアを聞いた時は自分の分野と、近い知見があると思いました。自分は健康やそのリスクに関して研究をしているのですが、健康コミュニケーションの分野の一つの行動変容の手法として、その行動を取る事のリスクを告知をする恐怖喚起コミュニケーションというものがあります。まさにこれは痴漢の監視カメラ設置や特にその逮捕リスクの告知と、行動のリスクを告知するという点で全く同じなのですが、健康分野では、この手法はコミットが弱い人(例えば喫煙者への肺がんのリスク広告ならば、喫煙を始めたばかりの人や、喫煙を止めるか迷っている人)に、より効果的と言われています。そう考えると軽犯罪である痴漢にもこの考え方が当てはまる可能性が十分あるのではないかと思いました。

渡邊:その可能性は十分に考えられると思います。今の話を聞いて思ったのは、恐怖喚起コミュニケーションの効果を測定するために、カメラの形を変えてみて、それぞれの抑止効果を検証をしてみるのも良いかと思いました。防犯カメラには基本的に二種類あります。ボックス型カメラと言って皆さんの想像する箱型の防犯カメラ。もう一つはドーム型カメラと言って真っ黒でドーム型の証明器具に似た形のカメラです。ボックス型カメラの方が見た目からしても認知は絶対にされやすいと思うので、数値的な優位性が示せれば、現在埼京線の一両目で使わているドーム型カメラに対しても、ボックス型カメラに変えられるよう働きかけることも検討できますね。

石橋:自分の分野では結構良く言われている事なんですが、痴漢や犯罪でもそのような仮説が正しいかは自分でも分かりません。でも、効果があるか分からないなら効果を証明すれば良いし、自分達で調査してみると良いと思いますよ。

渡邊:こうやって自分が持っていた仮説が、違う分野でも正しそうだと確認できるという所にイノベーション(革新)のタネが眠っていると思います。ゼミ中の議論でも、専門性はもちろん、興味や強みのある分野(軸)がみな違うからこそ意見にもオリジナリティがあると思います。ただ根拠なしに言いたい放題という状態ではなく、ロジックをもってお互いしっかりとフィードバックできるシステムだからこそ、組織として絶えず新しい打ち手だったり、戦略の打ち直しができるのだと思います。例えば、ヒートショックというお風呂の中で死亡する人が年間1万人以上いるという問題では、医学部の方が血圧変化と溺死の関係からのアプローチを建築の方が部屋の温度差と血圧の関係からのアプローチを取られていて、両方の分野から協力する事が問題解決に繋がる事が理解できました。
ダイバーシティのあるチームこそがパフォームするし、ゼミ生がいろんなバックグラウンドがあるのが、自分達の打ち手を良くしてくれるというところは色んな場面で感じています。

石橋:実際、それは正しい面はあって、多くの研究でもダイバーシティイノベーションを増やすという事が指摘されていて、特に性差や人種差よりもスキルセットや教育背景が重要という事も指摘されているようです。正直、今回の事例がイノベーションに当たるかは、まだまだ今後の活動の進展次第かなとも思いますが、こういうようなバックグラウンドから飛び抜けた結果が出るのは確かだと思います。

「瀧本ゼミの魅力について」

渡邊:そういう意味でも、このゼミは複雑な課題に向けて、多く分野の専門や関心を持った人達を横断的に集めようとしているというのは良いのではないかと思っています。自分が前いた団体では、皆が似たような、同じような知見、つまりはニュースだったり常識のもと、リサーチをして仮説を立てていたので、本当に狭い枠の中でしか議論が進められず、枠にハマってることに自分を含め誰も気付けませんでした。今では本当に色々な観点、切り口から意見が出てきていて、学際的で枠にまとまらない議論が常に展開されるため、とても良い意味で知的好奇心が刺激され、楽しいです。こういうところからオリジナリティのある発想が生まれるのではないかと思っています。
後、前の団体とは明確に違うのは、実行段階まで考慮して徹底的にリサーチや検討をして、色々な人からアドバイスを貰いながら、自分で動いていける所も魅力的だと思っています。私自身、ゼミがこのような実践的なシステムをとっていたからこそ、何がボトルネックなのかを特定するリサーチの深さだったり、検討・発表の際にメンバーからの徹底的に反証によって力がついてきたと実感しています。

石橋:ありがとうございます。渡邊さんは、今後はこの問題に関して、どのように動いていくつもりですか?

渡邊:痴漢という社会問題は、みなが知っているのにも関わらず、実は定量的なデータがほとんどそろっていないのが現状です。路線別、時間帯別、更には大都市の中でも地域別で定量的な測定を始めることを優先的に進め、エビデンスを作るというところから始めていきたいと思っております。そして、作ったエビデンスをもとに、痴漢の抑止効果の研究、その中でも防犯カメラの効果実証を学者と協力して進めていくことを目指しています。

石橋:今後も頑張りましょうね。最後に、これから入るゼミ生に向けて一言お願い致します。

渡邊:色々難しい話をしてきたように見えますが、私自身、最初は何をどう調べれば良いのかも全然わからなくて、ゼミ生の方が例えば、リサーチに関しては国会図書館でリサーチ会をやって下さったりとか、徐々にどのようにすれば良いイシューが見つかるのか、どうリサーチをすれば良いのか、暗黙知を教えてくださったと思います。入る当時は国会図書館に行ったこともなかったし、パソコンも使えず論文も調べたこともなかったです。あと、確かにこのゼミは専門性がある人も多くいますが、専門性にも色々な視点があって、広報的な側面でバリューを出す人もいれば、丁寧にリサーチをすることでバリューを出す人もいます。理系でも院生でもなく一年間般教ぐらいしか授業がなかった私でも、逆に枠に当てはまらないで考えることで相手が気づかなかったことを指摘してバリューを出せています。

なので、自分自身の強みを知って、それを活かして戦うという事を意識すれば良いと思います。その強みとは何でも良くて、むしろ言語化しづらいものの方がバリューがあるとも思います。例えば、私自身4歳から海外生活を送っていて、小学校までカタカナを半分しか使えませんでした。正確に言うと、カタカナのコの向きがどっちかわかりませんでした。にもかかわらず、一度も親から帰国子女枠で受験をさせてもらったことがありません。そのような環境から自力で何かを勝ち取ろうとする力やそのプロセスの中で苦しみに耐える力が芽生えたと思います。こういった力がゼミのリサーチやイシュー探しに大きく影響していると感じています。
最初は自信がなくても、自分の隠れた強みや、それを活かした戦い方に気づいて、実践することができる、そういう場が瀧本ゼミだと実感しているので、是非安心していらして下さい。みなさんがお越しになるのをお待ちしています。

石橋:渡邊さん、この度はインタビュー、ありがとうございました!

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